2011年7月31日日曜日

「未曾有と想定外」 (畑村洋太郎, 講談社現代新書)

帯にも書かれているが, 失敗学で有名な畑村先生が, 原発事故調査・検証委員会の委員長への就任が決まり, そうなると報告がまとまる前に「知り得た事実を自由にオープンにすることができません」と考えて, その前に まとめられた内容が本書である. しかし分量も十分だし, 説得力もあるし, 日々, 方々から聞こえてくる 「未曾有」とか「想定外」という言葉へのモヤモヤ感の理由がよく分かった

簡単に言えば, 今回の津波は 1200 年も遡れば未曾有ではないし, 原発が事故を起こす状況を 想定するのが専門家の仕事である. 地震や津波に関しては, 土木技術などのハード面が急速に発達しているが, そうは言っても自然の力は大きいので, 避難するなどのソフト面の対策を決して忘れてはならない. 原発については, 法律や規制に基づいていればそれで良いという考えではダメで, 社会の要望の変化を 敏感に察知して, それに対応した終わりのない安全対策をしていく必要があるということだろう

自動車も, 私の小さい頃は前部座席に 2 点式のシートベルト (装着は義務ではなかった) しか無かったが, 前部座席のシートベルトが 3 点式になり, かつ義務化され, 後部座席にもシートベルトが付く (最初は 2 点式だったが, 今は 3 点式. しかも装着が義務化) ようになった. 自動車を運転する人が増えたことと, より安全を意識する社会になったことを受けて, このように変化したのだと思う. このように, 技術として あるレベルで完成しても, 安全対策は不断で進めていく必要がある

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