※公開して間もない映画を話題としています. 読む, 読まないの判断は慎重にお願いします
床下に住む小人の家族は, 人間のものを少しずつ借りながら生活していた. しかしある日,
小人の少女・アリエッティが男の子に見つかってしまう. 小人の生活を守って生き続けていくために
引っ越しを考える小人の家族と, 小人の生きる姿から勇気をもらう男の子の話
宮崎の企画ではあるが, 宮崎が監督をしていないということで話題になっている作品である.
しかし, 絵面的には今までの宮崎作品・ジブリ作品のパッチワークのように見えた.
宮崎が制作に関与しないジブリ作品のレベルの高さを示しつつ, 一方で,
宮崎が制作に関与しないジブリ作品の上限を見た気がする.
宮崎が率いるジブリのスタッフが作った作品だし,
だからこそ期待を裏切らない「ジブリ」らしい作品に仕上がっていると考えることもできるが,
私としては, 宮崎ではない監督の作品であるならば, もう少し違った絵を見たかった
音楽は, 主題歌を含めて外国製. 小人の世界という異界を表現するために日本人が聞き慣れない
音楽を持ってきたのは当たりだと思う. ただ, 「聞き慣れない音楽」という印象が強すぎて,
BGM としての音表現の深さみたいなものは感じられなかった. 映画作品を通じて「音とはこうあるべき」
という哲学が, この映画では「音は異界を表現するもの」となっているような気がして,
それだけでは少し寂しいなぁと感じた
最後に落穂拾い. 背景の動かし方やフォーカスの変え方など, アニメとしては (多分) 新しい
表現もあり, そういうチャレンジングなところは Good. 小人がお茶を入れるシーンなど,
小さいが故に表面張力の効果を大袈裟に表現したところは面白かった. しかし
一方で, 大きさの統一感のイマイチな部分が気になったり (例えばアリエッティの髪を止める
洗濯バサミと男の子の指の大きさの比較など), 小さくなることの影響は表面張力以外にも
あるのではないだろうか? と疑ってしまったり (人間を縮小しただけなら虫と同じ
スピードで動くのは無理だろうとか, 両面テープで壁を登るのは多分無理とか) したところに,
自分の器の小ささを再認識した. 人間が増える一方で小人たちが減っていくという悲しい背景は,
鬼太郎と一緒だなぁとか思ったりした