2011年10月30日日曜日

「ローマ人の物語 <36, 37> 最後の努力 <中, 下>」 (塩野七生, 新潮文庫) 読了

ディオクレティアヌスが始めた四頭政は, 紆余曲折を経てコンスタンティヌスによる専制統治となる. そしてコンスタンティヌスは, キリスト教を利用して自分に正当性を与え, またローマを統治しようとする

ディオクレティアヌスによる分割統治はいいアイデアだったのだが, それを維持するのにコストが かかり過ぎる点と, やはり全土を 1 人で統治したい (特に正帝・副帝の正当性があやふやなときは) という 気持ちの結果, 長いこと続かなかった. 結局はしたたかなコンスタンティヌスがトップに立ったが, そこまで 考えてキリスト教を擁護したのは, すごい戦略家だと思う

コンスタンティヌスの戦略の帰結がどうなるか, 次へ進みます

2011年10月23日日曜日

「獣の奏者 (4) 完結編」 (上橋菜穂子, 講談社) 読了

王獣を操れるエリンは, 王獣軍を作るという真王の意向には逆らえないと考え, 王獣を訓練していく中で王獣と闘蛇と人との関係を見極めようとする. そしてついに 他国からの侵略が始まり, 人の手で増やされた闘蛇軍とエリンの王獣軍が戦場に 投入される

自然のバランスを崩したことによって到達した帰結は圧倒的だった. その圧倒的な 体験から得られた知識を, 隠すか, それとも引き継ぐかで, エリンらしさが出たという 感じがした

あとがきに, 探求編 (3) と完結編 (4) が生まれたきっかけはアニメ化だったというような ことが書かれていた. 文章も, 視覚を強調するような説明が駆使されているように感じた

「ローマ人の物語 <35> 最後の努力 <上>」 (塩野七生, 新潮文庫) 読了

ディオクレティアヌスは, ローマの現状 (広い国土と, いたるところでの蛮族の侵入) と自己の力 (軍事はイマイチ) を 冷静に判断した上で, 自分を含めて最初は 2 人, そして最終的には 4 人の皇帝を任命し, それぞれに担当領域を決めて 帝国を維持しようとする. それはそれで成功するのだが, それの副作用として徐々にローマが衰亡へと向かうようになる

現状から「変える」ことには, 必ずプラスの面とマイナスの面がある. ローマ帝国に平和をもたらし, また長期の安定を 狙ってディオクレティアヌスは様々な施策を打つのだが, 後世から見ると, より長期の視点からはマイナス面も目立つという のは, 運命の皮肉みたいなものを感じる

※ 34 巻も読んでいるのだが, ここに感想を書いていないことに気付いた :-) まぁ, よしとして, 先に進みます

「ローマ人の物語 <1> ローマは一日にして成らず <上>」 (塩野七生, 新潮文庫) 読了

ローマのスタートの部分, 王政のもとでローマの最初の国の形ができていったところの話. ローマで徐々に秩序が整い, 敵をも組み入れつつ国が大きくなっていくところが興味深い

昔, ローマへ行ったときにクイリナーレというホテルに泊まったのだが, 「クイリナーレ」という 地名がローマの初期から存在していたことを知ったのは, 本書からでした. 今, 「ローマ人の物語」の 終わりのほうを読みつつ, 一方で最初から読み直していきます

2011年10月8日土曜日

「大局観」 (羽生善治, 角川 one テーマ 21) 読了

「大局観」というタイトルだが, 1 冊まるまる「大局観」ではなく, 将棋という勝負の世界に 身を置く羽生さんのいくつかの思いや考えが述べられている. リスクや情報, 運についての 考え方が興味深い

将棋の戦法も日々進化し, また従来とは違う方法で腕を磨いてきた若者も活躍している. そういう人々と同じ土俵で戦って勝つためには, どんなにベテランであっても将棋の研究を 怠らず, リスクを取って戦い, 成長を目指さなければならない. 言われてみれば 当たり前かもしれないが, 将棋一筋でそれを実践してきた羽生さんの言葉だから 重みを感じた

また羽生さんの興味・関心の幅の広さにも驚く. 多分, 「将棋とは何か」を常に考えていて, 得られた仮説を検証するために異分野の勉強もしているのだと思う

2011年10月7日金曜日

「てふてふ荘へようこそ」 (乾ルカ, 角川書店) 読了

ビリヤードが好きな大家さんが管理する「てふてふ荘」は格安のアパートだが, どの部屋にも 地縛霊がいて, 住人は地縛霊と一緒に暮らしている. 生き生きとした地縛霊たちが住民と生活し, それに よって住民たちも徐々に変化していく様からは, 生きる力を与えられるような気がした

いろんな地縛霊がいるのだが, 励まされたという観点で 3 号室の石黒が私にとっては ベストかな? 私も乙 4 持ってるし :-)

「世にも奇妙な物語」あたりで実写化してくれたら面白いかも

2011年10月2日日曜日

頭をからっぽにする

今, 読んでいる羽生さんの「大局観」 (角川 One テーマ 21) に, 集中力を高める トレーニングとして, 何も考えない時間を持つということが挙げられていた. 確かに, 仕事と 関係ないことをしているときに, いいアイデアがふっと出てきたりすることがあったりする ので, なるほどなと思った

「仕事のことを考えない」方法は, 大きく 2 つあると思う. 1 つは, 他のことで頭を一杯に してしまうこと. もう 1 つは, 本当に何も考えないこと

例えば気分転換に体を動かす場合は, 前者に相当する. 走っていて疲れてくると, 「疲れた」 ということが頭の中で一杯になって, 仕事のことを考える余裕がなくなる. 雑念を払うという 目的で荒行に励むというのも, 考え方としては同じだと思う. しかしこの場合は, 仕事のことは 考えていないとはいえ, 別の何かが頭を占有していて, 新しいアイデアが思いつく余裕が 少ないのかもしれない

もう一方の「何も考えない」は, 荒行に対する座禅の考え方だ. 本当に頭を空っぽにする. 新しいアイデアが入ってくる余地があるが, 雑念が入ってくる余地もある. 難しいけど, こっちにも こっちなりの効果が期待できるんじゃないかと, 最近思っている

この秋は, 何も考えない時間をもつことを心掛けてみる

2011年10月1日土曜日

食堂の席取りと囲碁

食堂の席取りが, 囲碁に似ているなと感じた話

昼食時, 職場の同僚数名で食堂へ行く. 一緒に食べるメンバは 5 ~ 6 人なのだが, 同じ タイミングで職場を出られないときもあり, その場合は, 例えば 2 ~ 3 人が先へ行って, 残りは 遅れてくるという感じになる

先に行った人は, 一応は全員が座れそうな場所を確保するのだが, あからさまに荷物などを 置いて席取りするのもマナー違反なので, ちょっと工夫する

例えば窓際に 2 × 3 = 6 人掛けのテーブルが空いていたとして, 先に行った 2 人が 窓際に座るとすると, 残りの 4 席は多分空いているように見えるだろう. もし仮に, 先に行った 2 人が, 6 人掛け テーブルの中央部に座ったら, 窓側の 2 つの空席に座る人は少ないと思うから, そこは確保できる. ただし, 窓側では ないほうの 2 つの空席は, その隣のテーブルの空き状況次第では, 他の人が座ってしまうかもしれない. だからといって 窓側に 4 席の空席を作って 2 人が座ると, 4 席の空席が確保できているかは微妙な感じで, 例えば 2 人組だったら 窓際に座ってしまうかもしれない

こんな思考が, 囲碁の陣取り合戦に似ているような気がした

久しぶりの, 本や映画以外の文章でした :-p

「獣の奏者 (3) 探求編」 (上橋菜穂子, 講談社) 読了

降臨の野での事件から 11 年後, エリンは大公の命令である闘蛇村での <牙> の大量死の 謎を解明するが, そこで国に危機が迫っていることを知る. 国の力を高めるため, 王獣部隊の創設が エリンに命じられるが, エリンは別の道を考えようとする

最後のエリンの決断が, 実はイマイチ腑に落ちていない. 生き物の生を歪めたくないという エリンの考えと, 王獣を増やすというエリンの決断が矛盾するように感じる. だが, 王獣は本来は 闘蛇を食らうものということを考えれば, 条件付での王獣部隊の創設は, 王獣にとっては自然な活動 なのだろうか? (降臨の野でのリランの活躍を考えると‥)