2009年2月22日日曜日

「失敗の本質 - 日本軍の組織論的研究」(戸部良一ら, ダイヤモンド社) 読了

大東亜戦争のノモンハン事件, ミッドウェー海戦, 沖縄戦などを, 「日本軍という組織」の観点から分析し, そこから浮かび上がる日本の組織の特徴を明らかにしたもの. 20 年以上前に出版された本だが, そこで指摘されている問題点は現在の日本にも通じるところがあり, 示唆に富む

筆者らは, 日本の組織の特徴として, 帰納的戦略策定を得意とするオペレーション志向であるとしている. 噛み砕けば, 過去の成功体験に縛られているということ. 日本軍は日本海海戦の大勝を引きずり, その後の戦闘も日本海海戦のパターンで戦おうとするが, アメリカ軍は 1 つ 1 つの戦いの経験から戦略を少しずつ修正していった. 結果から帰納的に学ぶことは重要だが, その学びも必要に応じて捨てないと (学習棄却, 自己否定学習), 新たな学びを会得することができなくなる

また日本軍では精神論がことさら強調されたり, リソース不足から短期決戦を志向するあまりにコンティジェンシープラン (不測の事態に備えた計画) がない (最初から失敗したときのことを考えるな! という雰囲気もあった) など, 計画の時点で劣っていた面もあった. こういう反省も, 今の日本の組織の参考になるのではないか?

本書が出版されて 20 年以上が経過するが, そこで指摘された問題点が今の日本でも通用するように感じる. 日本という組織全体が過去の成功体験 (大東亜戦争以前の近代化, 高度成長期の経済成長) にとらわれていて, それを自己否定学習できず, 新たな学びを会得するチャンスを逃しているとも感じられる

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