予測の歴史を天文学 (惑星の軌道など) で振り返り, 気象・生物・経済に関する予測の今日的な問題をまとめた本. 予測に関する過去と現在を比較し, どちらにおいてもモデル自体に問題がある (天体の楕円軌道が認められるまでは, 何とか円軌道で説明しようとしていた. また気象・生物・経済は対象が複雑すぎてモデル化に無理がある) という共通点を見抜いた指摘はすごいなぁと思った. でも, 現在の予測対象はモデル化に無理があるという前提で, 例えば地球温暖化の予測についてどういう態度を取れば良いのか? という点に関しては, 主張が少々トーンダウンしてしまった感じがする. 科学的な予測が無理である以上, 人間的な判断に身を委ねるしかないので, 結局は一筋縄ではいかない問題なのだろうか?
天文分野では, ピュタゴラスが唱えた円軌道が 2000 年近く信じられてきた (全くの偶然だが, このあたりの話が 今月号の日本機械学会雑誌 にも出ている). しかし時代が下るにつれて現実 (楕円軌道) との間に差があることが知られてきたが, それは円軌道をベースにしてパラメータを増やすことで対処されてきた. 理屈を現実に合わせるためにパラメータがどんどん増えるというのは, 昔も今も変わらないなぁと思った
もう 1 つ. 株価の動きは「べき乗分布」のほうが合っているという主張があり, 本もたくさん出ている. しかしべき乗分布の欠点は, 平均値や分散を求められないということだ. 今の経済は正規分布の変動を元にしている (例えば, リスクは分布の分散である) ので, それを計算できないということは致命傷である. 正規分布には計算しやすいという特徴があるので, 使われ続けているのであろう. 正規分布の功罪がここにある
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