2009年4月26日日曜日

「粉」 (三輪茂雄, 法政大学出版局) 読了

「ものと人間の文化史」シリーズの本書では, 大昔から最近のナノテクまで, 「粉」に関する広範な事柄が紹介されている. 説明されている分野は食料品や火薬, 鳴き砂など広範囲にわたり, また遺跡や古文書から臼の歴史を探るなど, 筆者の間口の広さに驚く. 工業製品でも食品でも, 一旦「粉」を経由してから最終製品になるものが多く, そういう舞台裏が分かりやすく説明されており, 面白かった

感じたことを 2 つ. 1 つ目は, 石器から土器への移り変わりを加工の観点から考えると, 本書にも書いてあった通り, 引き算の加工から足し算の加工への変化と捉えることができる. 一方, 現代において, マシニングセンタに代表される加工機械の進化は, 「引き算の加工」を極限 (高速・高精度) まで突き詰めたものと考えられる. とすると, 石器から土器への移り変わりのアナロジーで, この次は「足し算の加工」の時代が来るのかな? プレスによる曲げや絞りなどの「±ゼロ」の加工の分野では, 従来よりも複雑な制御を可能にした装置ができつつあると聞くけれども…

もう 1 つ. 私は最近, 電動胡麻スリ機を入手した. 胡麻をするだけの単純な機械だが, 市販のスリ胡麻よりも美味しいスリ胡麻を作ることができる. すりたての風味などが残っているからだろう. しかしこの電動胡麻スリ機も, 筆者に言わせると単なるオモチャに過ぎないとのこと. 機械では目詰まりが起こらない程度の中途半端なスリ加減しかできず, 絵具用の乳鉢でするほうが美味しいらしい. 豆腐でも味噌でも, 昔は全てを家で作っていたが, 今では極端に言えば大きな装置で一極集中で作られている. 政治の世界で中央集権から地方分権への流れがあるように, 食品でも少し家庭の負担を増やすだけでぐんと美味しいものを口にできるという気付きが, 今後出てくるのかもしれない (今は食品安全の観点から, 家庭の負担が増えつつあるのかもしれないが)

筆者の web page の URL が変わっているようなので, 備忘のためにリンクしておこう

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